R40で今後10年の指針を考える。


皆さん「40歳問題」という映画はご覧になったことありますか?
FLYING KIDS浜崎貴司さん、プロデューサー/DJとして世界的に活躍する(そして今、世間を騒がせてもいる)大沢伸一さん、真心ブラザーズ桜井秀俊さんという、「アラフォー」以外あまり接点のないミュージシャン3人に映画のテーマソングを作るという難題を追った音楽ドキュメンタリーです。監督は「ナビィの恋」で知られる中江裕司さん。

この映画では、それぞれ中堅どころとなって「さて、これからどうしよう?」という感覚を抱えた3人の現状の告白からスタートして、音楽的な方向性が違う中、葛藤しながらも1曲をCCレモンホールで演奏するまでを追いかけていくのですが、最も表現者としてラディカルである大沢さんが、割とのほほんと構えている他の2人のやり方にキレたりしながら、かなり衝突しながらも曲を完成させます。僕はこういう大沢さんの決して妥協しないプロとしての姿勢は大好きです。本来ベーシストの大沢さんがギターを弾いてるんですよ!さらにそのギターを最後のステージで大沢さんは怒りを込めて叩き割るという(笑)。
このミュージシャンとしての「生ぬるいものは作らない」というアティチュードは素晴らしいのですが、その大沢さんがメンヘラ状態でかなり精神的に苦しかった時期の独白などプライベートもしっかり描いていて、撮った中江監督もそれをOKした大沢さんもやはりタダ者ではないなと感じました。

個人的には、いつもの手ぐせでギター弾いてしまってあまり音楽的に冒険しないけど、人柄がよくていつもニコニコしている桜井さんが現実的には家を買って可愛い奥さんと子供と暮らして最も幸福そうなのは「ロッカーとしてどうなのよ?」とズルイ気がしました(笑)。もちろん桜井さんの人間性はメンバー中一番いいとは思うのですが、あんまり金払う気はしないというか(苦笑)。


で、話は全く変わって、僕もその「40歳問題」が目の前にあります。来月、遂に39歳になるのです。

40代の自分がどう生きるべきか、これを考えることが完全に年末年始のテーマになっています。
自分の中ではかなりの転換点になると思っています。20代や30代前半は結構真剣にやっていながらもスキルも経験もないので、完全に余裕のない戦闘モードだったように思いますし、相手は無理解な社会であり、所属していた会社であり、当面の仕事であり、何よりままならない自分自身で、まあ、本当に斬った貼ったの日々でした。

でも、最近そういうのは、もうどうだっていいようになってきたように思うんです。

40代でやるのはもう決まっているというか。それは多分、色んなことを「やめること」だと思うんですね。自分探し的なものとか、もう40年も生きてきて「今ここではない自分」なんてはっきり言ってそんなものないですし(苦笑)。生きてきた時間軸の関係性の海を自分は未来も地続きで生きていくと思っています。

そして、これまで十分にやってきた「やりたくないこと」を意識してやらない。「今はまだ曖昧模糊としてどうなるかわからないが2、3年後もやってるわけにはいかんだろうし、今は何となくうまくいってるけど、自分のためにはならない」と思えたらその時点でスパっと区切りをつける。身を引く。

そして、もう人には期待しない。このメンツで数年後もいてもしょうがないな」という顔ぶれに囲まれて、既に数年たっていたら意識的に離れる。これはなんか冷たい人間に思われるかもしれないけど、しょうがないんですよね。

さらに、「世界を変える」とかそういうことからもなるべく距離を置く。世界を変える前にまず自分しか人は変えられないということが、30代後半になるとわかります。

この世の夢は煙玉じゃない。誰かに憧れることでもない。若いときは誰かに憧れて頑張るものですが、ある程度年を重ねてそんなことするのはプロじゃないですよ。そんな人いたら自分の首を締めるだけです。その人になれないまま、あっという間に時間が過ぎてしまう。人はそれぞれ設定条件が違い、その人の成功を自分が真似ても成功はしないということがこの年になるとよくわかりますから。

そして、40歳は人生の切り返し地点なんですよね。本当に時間の管理がもっとも大切です。20代と違って、体力も時間も限られていることを痛感します。

ですから、ままならない自分を引き受けながらも、自分の活かし方に目を凝らす。いつも情報を摂取して、スケジュール帳を埋めないと気が済まないOLみたいなことをもうやらない(笑)。「チャレンジ」は当然必要だけど、それに酔っても仕方ない。チャレンジだけではうまく行かないことはもう痛いほどわかりましたし、どうせやりたいことがあれば、チャレンジなんて無意識にするものです。特に僕は同じことをやってると飽きる習性があります。

加えて、自分ができることを全部自分でやらない。なるべく身近にいてくれる若い人に教えたり、伝えていく。ある種の自分の「無責任さ」に照れないで人に任せる。すると、人なんて「なんであの人はあんなことを言うんだろう、するんだろう」と必死に考えて、自分でどうにかしていく。かつての自分もそうだったし。仕事に関しては、どんどん年下の人と一緒にやっていこうと思っています。ウォーホールやマイルスは死ぬまでイノベーションし続けた数少ないアーティストですが、彼らが常にリフレッシュしていたのは、若い人の感性を信じていたから。若い人はスキルや経験がないんだけど、鈍った30代や40代よりも自分たちの感性だけには自信満々で、そこにプライドがある。年を取ってもそういう人たちと同じ目線でやっていきたい。偉そうにしないでどんどん入っていく。ノマドをやって色んな所に泊まって、ほとんどが一回り下の人との出会いばっかりだったんですが、コミュニケーションが不全だったことは一度もありませんでした。共通言語がない場合もあるけど、言ってることはわかる。逆はないかもしれないけど。


捨てに捨てて、それでもどうしても捨てきれず置いていけなかったものをスーツケースにつめて、また40代に向けて旅にでる。今この手が持っているスーツケースの中身で何ができるか。40代への助走として、来年は重要な1年になるし、30代でしかできないことをめいっぱいやって、「グッバイ・サーティ!」としたい。

そして、時間ができれば、面白いこと、新しいことをどうせ見つける。だから、なるべく時間を作る。時間が空いているから、そこに何かを埋め込むんじゃなくて、まずは空ける。それもめいっぱい空ける。すると、色んなものがまた新しく入ってくると思う。ひらめきは余白があればこそ。
それでも、まだ何もやりたいことがなかったなら、スーツケースをひっくり返して落ちてきたもの中から、「何か使えそうなのなかったけ?」と探せばいいだけの話だと思っています。

さて、この40歳問題が39歳になる来年から本格的に始まります。また勝負の年です。