「インセプション」サントラの凄まじさ

クリストファー・ノーラン監督の「インセプション」が世界的に大ヒットらしい。


もちろんあの「ダークナイト」の監督の次回作で、ディカプリオとケン・ワタナベの
主演なのでそれだけで訪れる客も多いだろうが、難解なSF映画としては驚くべき収益と言えるだろう。


個人的には難解さは気にならなかった。
見たことないような映像と圧倒されながら、
複雑なストーリーを色々と想像するのは映画というより、
まさに「体験」だった。


ただ大絶賛かというとそうではなくて、
(それがこの映画をもう一度観たいと思わせる理由にもなるのだが)
主人公の過去のトラウマと多層な夢のつながりが
イマイチつながってこなかった
あとこれはネタばれになるけど、
もしかすると、夢の中で死ぬこと=虚無に落ちる、
というのが宗教観の違いからだろうか、腑に落ちなかった。
だいの大人たちが命がけであるミッションを遂行しようとするのだが、
「結局夢だったら死ぬのは怖くないんじゃないか?」と思ってしまうのだ苦笑。


でも、この映画の凄さは、観終わった後も頭の中でぐるぐると
現実に対する不安感、夢と現実のはざまにいるような不安定感が
渦を巻いているところ。
そもそも、映画自体が夢のようなものだから、
映画の中の夢、夢の中の夢、そして映画という夢、
の幾えにも重なった構造を映画館で体験することになる。
映画館を出たとき、“トーテム”でこれが夢か現か確かめたくなったほどだ。


それで、現在、映画を観て1週間以上経つのに、
頭の中でサントラが鳴りっぱなしである。
クレジットロールに、「Jonny Marr」の名前を見つけたとき、
その答えはわかったような気がした。


イギリスのギタリストで僕が好きなのは、
ジョニー・マージョニー・グリーンウッドだ。
グリーンウッドは「There Will be blood」の映画音楽を担当し、
不吉極まりない不協和音をサントラにしていて、
これも個人的には大ヒットだったが、
今回の「インセプション」のサントラはそれ以上。


実は、メインテーマはエディット・ピアフの音源を
スロー再生し、それをサンプリングして作られているそうだ。
埋め込まれた過去の音楽の記憶。
まさに「インセプション」だ(笑)。

詳しくはこちら「YAMDAS Project」様のブログを参考↓
http://d.hatena.ne.jp/yomoyomo/20100729/inception


ダークナイト」の音楽も恐ろしかったが、
インセプション」のサントラも心に軋み、
夢に忍び込むという主人公たちの背徳を、
強烈に増幅している。


その「インセプション」のサントラのライブ演奏の
映像がNMEのWebサイトにアップされているので、
気になった人は是非観てほしい。(Ust映像をエンベッドできるように、はてなは対応してほしいものだ)

The Smithsの天才ギタリストとして、
卓抜したテクニック、唯一無比の美しいアルペジオとカッティングで
一世風靡してから早25年あまり。


マーのプレイは、大きく変わったが、
そのセンスの鋭さは全く錆びていない。


いわゆるロックギタリスト的な脂ぎったディストーション
自己顕示のチョーキングは全く選択しないマー。(グリーンウッドもそうだけど)
彼は映画音楽向きだとずっと思ってきたので、
今回の「インセプション」のような超大作で、
彼が活躍したことは嬉しいの一言に尽きる。

http://www.nme.com/news/the-cribs/52046