詩人の言葉、の件






座・高円寺」で行われた谷川俊太郎さんと、
息子さんでピアニストの谷川賢作さんのジョイントライブ。
ずっと杉並在住というお2人。地元、阿佐ヶ谷の街を描写した詩などを読まれる。




父「みなさん東京にオリンピックは来て欲しいですか?わたしゃ来てほしくないね〜」
子「そんなの石原さんに言えばいいじゃない!みなさん来てほしいですよね〜」
父「いや、石原は嫌いじゃないんだけど、まあ、皆さんはオリンピックは初めてなんですよね」


市川昆が監督した、1964年の東京オリンピックの記録映画において、
実は脚本にも参加していた詩人は、詩を書き始めて60年。
(100校以上の校歌を作詞したという。その1曲を実際に詩人みずから歌った)


でも、伝説でも巨人でもなく、
そこに生きる1人の人間としての言葉と微笑みがあった。


この日、最後に読んでくれた詩を忘れることはないだろう。




生きる 谷川俊太郎



生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと惑るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること


あなたと手をつなぐこと


生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ


そして
かくされた悪を注意深くこばむこと


生きていうるということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ


自由ということ


生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ


いまいまが過ぎてゆくこと


生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつりははうということ
人は愛するということ


あなたのてのぬくみ
いのちということ






超私的には、こんな言葉の現場に出会ったのは、
1990年のTHE BLUE HEARTS「EAST WEST TOUR」以来かもしれない。