イベント「こうさてん」〜別府滞在の件

1泊2日の別府滞在。
今回、僕が講演したのは、
別府にあるいくつかのNPO団体が共同主催したイベント「こうさてん」。

アートNPO「BEPPU PROJECT」が、
(古い温泉街ならではの)
商店街のシャッターが降りた店舗を
ギャラリーやダンスの練習場、もしくは今回みたいな講演に使えるフリースペースにリノベーションしている。
そんな空間が点在して4つほどある。

朝5時起きで眠たい目をこすって、
8時羽田発の飛行機に乗った。

空港には2000年に地元に設立された、
立命館アジア太平洋大学(APU)の大隈君と森君が
迎えにきてくれている。

というのも、今回のお招き、
大隈君との出会いから全て始まった。
彼がTOKYO SOURCEの本を読んで、夜行バスに乗って
わざわざ僕をたずねてきてくれたことがきっかけだった。

森君は「ハットウ・オンパク」という
温泉地を紹介するNPO団体にも所属していて、
1年休学して、アテンドに専念していたという。
下手な観光ガイドよりよっぽど話がうまくて、知識も豊富。
駅前の観光名所から、
商店街、地元の人が通う温泉、市場、スーパー、
歓楽街、リノベーションされた空間、
歴史のある路地と食べ歩きなどしながら案内してもらう。




アホロートル」というレトロな喫茶店は、
かつて置き屋だったという2階建ての古い家屋だ。
いい味を出している。
別府は、戦災、震災を経ていないので、
こういう昔の建物が残っている。

昼食後、講演の準備にとりかかる。
リノベーションされた会場は、
2Fをとっぱらった吹き抜けの構造。
3Fはアーティストが滞在できる生活空間となっている。


用意したパワポの資料を見せながら、
1時間ほど話す。
テーマは編集となりたい自分について。

TSのことを知らない人も多いので、
前半は、僕自身の仕事や活動内容、書籍化までの説明をさせてもらう。

書籍の中で分類した、
笑い、
リアルとアンリアル、
編集、
日常と身体、
社会と地域、
旅、
という6つのテーマが
書籍化の編集作業の過程で浮かび上がっていったことや、
編集の技術が生活やプロジェクトに
どう関係するかなどを話していく。

途中で、パソコンの電源が切れるトラブルもあったが、
質疑応答で手を挙げてくれる地元の関係者や学生がたくさんいて、
盛り上がっていった。
気がつくとあっという間の2時間。
終わった後も、いろんな人にあれこれ説明したり、
名刺交換したりで地元の人の熱意に打たれぱなしだった。

ちゃんとした講演なんてほぼ初めてだったけど、
無事終わってホッとする。おおむね好評だったよう。
講演後、学生スタッフのみんなと記念撮影。


BEPPU PROJECTの代表・山出さんにも御挨拶。
地元メディアの取材を受けたりでおお忙し。


1日目の夜は、竹瓦温泉という商店街近くの温泉に漬かり、
(源泉なのでやたらと熱い!!)

その後、焼き鳥を食べながらAPUのみんなと歓談。
2次会はバーに場所を移して2時まで。
寝不足もあり、宿に戻るとぐったり。
でも、途中で目が覚めて夜明けの街を散策。
今度は眠れなくなってしまい、朝風呂に入る。

2日目は、
もくもくと白煙の上がる鉄輪温泉に案内してもらう。





地元の人は地熱を利用して、天然の蒸し器を普段の調理で使っている。
案内係りの森君にたまごを茹でてもらって、みんなで食べる。

この土地、地面がヌクヌクしいのか、
やたら猫がいて、のんびり寛いでいる。それも相当人懐こい。
かわいがってもらっているのだろう。
人慣れしているいい子ばかりだ。写真を撮りまくり。





しかしながら、
旨い飯に温泉、そして猫なんて、
僕にはまるで天国のような土地。

この天丼がなんと680円!!

地元が九州のくせに、
地味な温泉街という、
子供の頃の観光旅行の印象しかなかった別府、
まったくもって、すみません!!なめてました!

蒸し風呂にも挑戦。
風邪気味だったが、生気を取り戻した。


山のてっぺんにある、
APUは、まさに「天空の城」。
学際も「天空祭」という名前らしい。
隣接した寮もあり、6千人もの学生が通っている。
そのうち4割がアジアを中心とした留学生というから驚き。


街に戻る。
この日は、シブヤ大学の左京学長もきていて、
左京さんの話を聴講することができた。
シブヤ大学は京都にも大学を出すと聞いていた。
僕がインタビューしてわずか2年。
今年の目標はあと3校作ることだという。
決して財政的には楽ではないのに、
左京さんの頑張りに敬服する。

途中会場を抜けて、
BEPPU PROJECTのスタッフ・林君と歓談。
そこで紹介されたのが、
数々のアートプロジェクトを手掛けた評論家、キュレーターの芹沢高志さん!
初めてご挨拶。
TS本には芹沢さんの著書の言葉を引用したりしていたのだ。

芹沢さんに案内してもらって路地を歩く。
4月から始まる別府アートフェスティバル「混浴温泉世界」には、
世界中からアーティストが参加して、
古い日本家屋をレジデンスにして、制作に入っている。

あのインリン・オブ・ジョイトイ
ビデオ(パフォーマンス?)で参加という。
インリンが作品の舞台にした、築うん十年のアパートには、
年金で暮らしているおばあちゃんが住んでいた。



残念ながら、ここでタイムアップ。
あっという間の2日間。でもとてもとても濃密で貴重な2日間。
せめてあと1日あれば、
もっと色んな人と交流できたのだが。
4月の芸術祭に来ることをみんなに約束してお別れ。
学生のみんなの熱い気持ちと心尽くしに打たれっぱなしの旅でした。

別府には東京にないものがたくさんある。
東京では欲しくても手に入らないものが。
美味しくてヘルシーな食事、
そして温泉。
NPOの人たちのひたむきさ。街の人のおおらかさ。
加えて、強く感じたのが、
“スキマ”感、そして多様性。

リノベした空間も、
多くの店のシャッターが閉まっている
古い温泉地ならではなんだけど、
手を加える余地、スキマがあるのが、
なんだかリラックスした気持ちにさせてくれる。
東京の全部管理された感じとは対極だ。

ボロボロの古い建物がむき出しになっていたり、
でも、そこに人が手を施して、あらたな価値を見出したり。
APUの留学生がすんでいるので、街には外人も多い。
老人と学生と外国人が混在している温泉地。

商店街の横に温泉があり、
そのま隣がソープランドだったりラブホテルだったりする。
混沌としているけれど、神経質じゃない、ダーティじゃない。

この土地に憧れがすごく沸いてきたけど、
僕は自分が東京にいるからこそ、
呼んでくれたことの意味を考える。

九州の田舎出身の自分が東京に出てきて、
東京になじみ、今度は、東京から九州の別府に呼ばれていった。
東京にいる意味。別府にいる意味。
いろんな“価値”が分かる自分にできることは何だろう?

東京をハブにして、人や情報を地方から東京に渡したり、
東京から地方に伝えていったり、地方と地方をつなげたり、
そんなことがこれからできないかと思う。

その価値や意味について考えると、たしかな喜びがある。

そんなことを思い巡らせながら飛行機に乗って帰ってきた。

言葉に表せないくらい、とても収穫の多い2日間。
APUの学生の皆さん、地元NPOの方々、
本当にお世話になりました!!
またお会いできる日を楽しみにしています。